―――「想いと花火――この2つの共通点、な〜んだっ?」
―――「謎々か?」











少し強めの風に揺れる雑草は、湿っている。
その上に座っているせいか、少し尻が気持ち悪い。
昨日の雨が原因だろうか?

「元樹ぃ…冷たくないの?」

地面を気にする俺の様子を見て、彼女――優子が心配そうな顔で聞いてくる。
最も、そう言う自分はしっかりとござを持ってきている準備のよさだ。

「冷たい…けど」
「けど?」
「別にいいかなぁ…って」
「いいんだ?」
「いいよ」


一つ、また、一つ――空に花火が上がっては消えていく。
毎年恒例の花火大会。
と言っても小学校を出てからは一度も来てない。
一緒に来るような友達はいなかったし、何より面倒くさかった。
それが、何でか今日は従姉と来ている…。

俺の従姉、優子の意味不明な行動はいつもの事だけど、なるべく巻き込まれたくは無かったのが本音だ。
今日も久しぶりにお袋に小遣いせびりに来たと思ったら、『元樹ぃ!行っくわよ!』だもんな。アホか。
腕じゃなくて首を引っ張ってつれて来られたのは勿論、ジュースまで奢らされて散々だ。
しかも、この女は更に追い打ちをかける…。

「彼女は?どったのぉ?」

何て笑顔のムカツク女だ。

「……風となりました」
「フラレたんだぁ〜!」

気遣いの精神はゼロだわ、思いっきり笑うわ…クソ、凹ませるぞ?

「そういう、優子はどうなんだよ?彼氏はどうしたんだ?」

この女が振られたことは百も承知だ。

「……あの男は徴兵さたわ」
「どこに?」
「アナタと私の心の中に」
「何だそりゃ……痛っ」

ガッチシ太腿つねりやがった。

「で、元樹は何で別れたわけ?彼女、可愛かったから愛想つかされたのは目に見え見えだけどさぁ」
「よく知ってるな、バカ女」

全くもって、その通り――くやしいが。
いい女は引きとめるのが大変だ。俺と別れても引く手あまたなわけだし。
何より、俺が情けない男だったから――この女に言われるのは悔しいが。

「優子は何で別れたんだよ?」
「聞きたいの?」
「全然。気にならなくも無いの反対の反対」

つまり、気になるわけだ。
実は、あれだけ仲がよかったんで、何で別れたか気になっていた。

「教えてあげない」
「何でだよ…」
「知らない」
「知らないのか?」
「知らないよぉ」

そう言った優子の笑顔に少しドキッとした自分はどうかしてる。


――ドンッ
その時、大きな最後の花火が夜を照らす。

光に照らされた優子は真っ赤なセーターを着ていた。
アレは俺が去年の誕生日に買ってやったやつだ……。
勿論、強制的に。


付け加えるのなら、俺が来ているジャケットは優子が誕生日にくれた。




少し、何だか少し――少しだけ。





その少しの感情も、花火と一緒にすぐ消えた。