きょっかい ― 【曲解】  (名)スル

  物事や他人の言動を素直に受けとらず、わざとちがった解釈をすること。

  また、その解釈。「こちらの意図を―している」

                        大辞林第二版より抜粋

 

 

 

 

 

1st Episode : キョッカイノ (ウタ)

 

 

 

 

 

 廃墟。

 正しくその言葉に相応しくビルは崩れ……瓦礫は山となっていた……。

 その廃墟の名はかつては、第三新東京市……そう呼ばれた……。

 今では……スラム=ルッビス……そう呼ばれる…。

 ルッビスは世界にある七大スラムの内、最も飢えた人が多いスラムである。

 サードインパクトによって変わり果てた世界にあって、今まで恵まれていた日本で生きていた分、 生きるすべを知らない者が多いのが

 主たる理由である。もちろん…それだけではないが……。

 

 

 

 ―――22:30


 雷鳴が鳴り響く深夜のことである、そのルッビスに強大な音が響き渡った。

 「グアァァァァーーーー」

 ――悲鳴であった。

 悲鳴の主はシン=ゴウ……見るからに腕っ節の強そうな男である。

 そしてゴウの前には……暗闇の中……ただ稲妻に照らされ……黒髪の男が立っていた……。

 射抜くような……視線と共に…。

 

 

 

 ―――22:00


 ゴウは浮かれていた。その手に入れたモノの大きさに……。

 が

 それが命取りであった…。

 手に入れた力を男の目の前で使ったのが……彼の…身を滅ぼした種であった。

 その男は刀らしきものを携えており……ゴウは自分より一回り小さい男が刀など持っているのを生意気に感じたのだ。

 ようは丁度いい力の実験相手を見つけた……そうゴウは思ったのだ。

 そしてゴウは言いがかりをつけた。

 「よう、兄ちゃん……そんななりで刀なんて振れんのか?」

 にやにやしながら近づいて来たゴウに男は不快感を顕にした……。

 「……何か……?」

 そう言って立ち去ろうとしたが、それが益々ゴウの燗に触った。

 「おい!兄ちゃん……あんまり調子に乗んなよ……俺は“user”だぜ……いいの…ッ何!!」

 いいのか?そうゴウは続けようとした…が、男がゴウの胸倉を急に掴んだ。

 「フン……“user”か……“word”は……何だ……?」

 不意に男の声が冷たくなる。

 ゴウはこの物言いにカチンときた。こんなチビが何を偉そうに、と……。

 「このチビが!俺様の“word”“Power”!テメエみていなチビは粉々にしてやる!」

 だからこそ威圧して見せた…。

 が

 その言葉が男に火をつけた…。

 「“Power”か……フン!頭の悪いヤツに妙に多いな…“Power”は……。」

 そう言って口の端を歪ませた。

 「この、チビが!」

 元々軽くあしらうつもりが思いがけないことを言われゴウはついに…切れた……。

 「Power!!」

 そうゴウが言葉を紡ぐとゴウの体が青く発色し、じょじょに筋肉が盛り上がり……服を引きちぎった。

 ゴウの体は嘘のように隆起した筋肉を全身に纏っていた。

 「……威張っているようだから……どれほどかと思えば……青か……。」

 男はさらに罵るように言い放つ。

 青色の発色は“word”が鍛えられていない証拠であり同時に初心者の印であった。

 ゴウは馬鹿にされたような感覚に陥り、男に殴りかかった。

 ベコオォォォン!!

 が、男の一撃は見事に瓦礫にヒットした。

 強力な力による一撃で瓦礫は激しく形を歪めた。

 ゴウはその威力に満足すると自分の目の前から急に消えた男を目に捉えるべく辺りを見渡した。

 が、何処にも男の姿は無かった。

 ――否。

 首にヒンヤリと冷たいものをゴウは感じていた。

 そう男はゴウの後ろに回り、既に刀を抜き、ゴウの首に当てていた。

 「……で?……どこで“user”になった?」

 その一瞬、確かにゴウは男の殺気を感じた。

 が、“non-user”“user”が殺されるなど有り得ない……そう信じて疑わなかったゴウは即座に

 腕を己の後方に振りぬいた。

 ドコオォォォン!!

 またしても瓦礫を大きく歪ませたが男を捉える事はできない。

 「ッチ!ちょろちょろと!」

 ゴウは再び怒りを顕にする。

 「……フン!やはり青だけあって大したことは無いな……“Power”“user”でも強いヤツはいる…… そういうヤツらは

  よく鍛えられているから、その無駄に多い筋肉をスピードにも生かしている…… その点…お前は…見た目通りの頭の悪さで

  まるっきり力だけだ……まあ……体よく言えば……雑魚ってことだな……。」

 最もな指摘をされゴウは歯を軋ませる。

 「ック!“non-user”が!」

 その言葉で更に男の声が冷たくなる。

 「……ッフ!笑わせる…所詮…同じ人間だ……それに………俺が…“non-user”だといつ言った…?」

 「何!?貴様、“user”か?!」

 「なりたくてなった訳ではないがな……だがな……貴様程度の雑魚…“word”を使う必要などない…。」

 「なんだと!」

 「これで……充分だ……。」

 男はそう言って刀を構える。

 「そんな細い刀でこの俺様の筋肉を貫けるか!馬鹿が!」

 「馬鹿に馬鹿と言われたくは無いな…………ところで…お前は…『井の中の蛙、大海を知る』……という言葉を知っているか?」

 「急にな……グアァァァァーーーー

 

 

 

 ―――22:30


 雷鳴の中、佇む男の刀は赤く染まり、辺りには血飛沫が舞っていた。

 急になにを…そう言いかけたゴウの腕は既にゴウの体には付いていなかった。

 まるで元から別種の生命体であるかのようにゴウの両腕は瓦礫の中に転がっていた。

 「フン……影切えいせつ…… お前程度には勿体無い技だったな……で…俺の切り口は細胞を潰さないように綺麗に切れている…。

  俺の知り合いに“Save”“user”が居る…返答次第ではくっつけてやってもいい……。」

 そう細胞が潰れていなければ再び接着することは容易い。

 刀の名人などが大根等を切断して再び接着するが、それは切り口が見事で細胞が潰れていないためである。

 つまり、男が名人ともとれる刀の使い手、ということである。

 「……わ…解った……。」

 ゴウは流石に敵わないと感じたのか、素直に従った。

 「…そうか……ならば…お前は何処で“user”になった?」

 「俺が“user”になったのは…ネ…グホ!

 突如、ゴウが苦しみ始めた。

 「どうした…?」

 男が不審に思い近づく…。

 「熱が…集中している……まさか!クソ!」

 バッ!

 男が後方に大きく飛びのいた。

 そして…

 バゴオォォォォン!!!

 男の体が爆発した…。

 

 「“Bomb”“user”か……?しかも……キーワードで爆発させるとは……ただの“Bomb”ではない……

  『ネ』…やはり『ネルフ』か……ということは“Bomb”では無く……“爆”…… アスカか……。」

 男はそう小さく呟くと……暗闇をかけていった…。

 

 

 

 

 ―――翌朝。


 グッスリと眠る男の下に声が届いた。

 タイプ3が出たぞー!」

 さながら、前世紀の火事を伝えるような叫びに男は『またか…。』そう思った。

 男はベットから起き上がると刀を手にし外へと飛び出した。そして…

 「フン!……タイプ3……サキエルか……丁度いい鬱憤が溜まっていた……塵にしてやるよ……。」

 と、口の端をつり上げる。

 タイプ3、そう呼ばれた全長2メートル程の化け物は気持ちの悪い声をあげながら男に飛び掛った。

 「ギュォオォオオン!!」

 化け物が手からパイルを出し入れしながら突進してくる。

 向かってきた化け物からサラリと身をかわすと、男は真っ直ぐに刀を振り下ろした。

 ズパアァァァァン!!

 勝負は一瞬で決着した。

 化け物の体が縦二つに裂けた…。

 「……鳴Y(みょうよう) ……再生されるとやっかいだからな細胞を潰させてもらった…。」

 男はそう言い放つとカチッ!と刀を鞘に収めた…。

 

 

 

 男に斬られた化け物……サードインパクト前に使徒と呼ばれた存在が…大きく縮小したもの……。

 秘密結社ゼーレが引き起こしたサードインパクトは一部を除く全てのヒトを原初の海――シー・プラントへと廻した…。

 が、幾人かがシー・プラントから這い出、そしてあるモノを発見した…。

 『幾人か』はネルフの根底に当る者達であり…『あるモノ』は“user”を作り出す狂った装置だった。

 “word”と呼ばれる言葉を唱える事で“user”固有の能力を発揮する未知なる力……。

 それには幾つもの種類があり、また万人が身につけられるモノではなかった…。

 そして…選ばれた者は力のない者へ向かい侮蔑を込め“non-user”と呼んだ…。

 だが……狂った機械を使わずと……“word”を手にした者達が居た……。

 使徒戦役においてチルドレンと呼ばれた彼らは……極自然に“word”を手に入れた…さらにその“word”

 扱う者が彼らしかいなく…どの力も強大で強力無比であった……全てのヒトは彼らに尊敬と畏怖の念を込め…

 こう呼んだ…

 第一世代(ファースト・ジェネレーション)……と……。

 

 

 

刀を携え……何かを求むる……

彼の名は……

第一世代(ファースト・ジェネレーション)……

シンジ……

 

 

 

―― to be continued.