僕は…会いたかった…凄く。

 私は…会いたかった…凄く。

 伝えたい…言の葉がある。

 信じている…。

 それでも…泪は…とまらない…。

 


 

The End of Evangelion After stories

                                  

With ‐伴に‐  story2 2Man:1Woman&1Man

 


 

 

――――2016年――――

 白いモニターに灯がともった。

 閃光。まるで、目も開けていられないような白い戦慄の光。

 一種、幻想的にも取れるその光景にモニターを見つめる面々は痛烈な表情を取っていた。

 「………赤木君、単刀直入に聞こう。彼は生きているのかね?」

 「……支部も含めて全てのMAGIを使用して、捜索を行いました。……が、発見できません。」

 「……生存確率は?」

 「………0.0000023%です。奇跡でも起きない限り……おそらく…」

 まさに死刑宣告。

 「………ゼロじゃない。ゼロじゃないわ!私は信じる!シンジは生きてる!絶対に生きてる!」

 ゼロじゃない。可能性はゼロじゃない。そう、アスカは割れんばかりの声で叫んだ。

 もちろん、それはここに居る、全ての人間の総意である。

 ―――何故って?

 彼は戦ってくれた。

 彼は護ってくれた。

 彼は泣いてくれた。

 彼は笑いかけてくれた。

 彼は心を救ってくれた。
   
 彼は希望だった。

 だからこそ、願おう、彼を。

 だからこそ、願おう、生を。

 

 

 エメラルドグリーンの透けるような長い髪。

 彼は笑う。そして、壊す。削ぐ。分解する。

 肉が千切れた布のように飛んでいく。

 紅い血が飛び散る。霧のように、雨のように、飛散する。

 彼は思っていた。

 ――なんてツマラナイ。と

 向かってくる人間の全てが、まるで下らなかった。

 そう、ツマラナカッタ。

 ――簡単に死んでしまうから。

 ――しかし

 ビュッ!!

 突然に頬を掠め取った、小さな白銀の刃。

 彼は、『やっと面白くなってきた。』と呟く。そして、フフフと顔に醜悪な笑顔を貼り付けた。

 ゴォォウ!

 相手との距離を詰める。そして、第一撃。

 ブゥン!

 空振り。

 彼の攻撃はいともたやすく避けられた。

 「へぇー、イイね!キミ、凄くイイ!イイよ!楽しく……なりそうだ!」

 恍惚とした表情をたたえて、相手に飛び掛る。

 バッ!

 空気が震撼する。

 チーターを彷彿とさせる鋭い身のこなし。常人ではおよそ捕らえられない、その動き。

 ――しかし

 避ける!

 相手は――碇シンジはおよそ常人ではなかった。

 そう、シンジには見えていた。ゆっくりとした緩慢な動きとして。

 研ぎ澄まされた感覚。極限の集中力。白き無音の世界。

 何者をも寄せ付けない“ZONE”の力。

 「…あなたは、何者ですか?」

 幾分の落ち着きを感じさせシンジは男に問うた。攻撃が当たらないことで余裕が生まれているのだ。

 「僕?僕はカエン。花畑の『花』に遠いの『遠』花遠だよ。で?僕に聞いたんだ、君の名は?」

 至極、落ち着いてカエンは答えた。

 「シンジ、シンジですよ。」

 「フフフ。シンジ君、か。でも残念だよ。せっかく知り合えたのに、直ぐにお別れしなくてはいけない。フフ。」

 バッ!!

 「そう簡単には…死なない!」

 バッ!!

 両者が飛び出した。

 「(僕の方がスピードは、上!)」

 素早くシンジはナイフを突き出す。

 ヒュッ!

 空気が切り裂かれる。

 キイィィィィインッ!

 ナイフが刺さる!

 ――が

 バリイィィィィン!!

 あたかも粉のように、ナイフが飛散する。

 「なっ!A.T.フィールド!?

 そこに存在せしは、まさしく何者をも寄せ付けない、絶対不可侵たる領域。

 「フフフフ。イイ!イイよ!その驚いた、顔!最高にイイ!堪らない。堪らないよ!

 「(生身でA.T.フィールドだと?まさかこいつ、カヲル君と同じ存在か?)」

 「キミは本当にイイ…。壊したいほど…。」

 そう言い放ち顔を歪める。

 ゾクゥ!

 「(グッ、グウゥ!す、凄い殺気だ。ま、まずい…体が震える。…う、動けない。このままじゃ確実に殺られる。

  こいつ、強い!とんでもなく強いぞ。逃げなきゃ、逃げなきゃダメだ!)」

 「そろそろお別れの時間だよ。シンジ君。」

 ポォウ

 カエンの指先に光が収束する。

 ズゴォゥウ!

 カエンの指先から、何百ものオレンジ色の光が解き放たれた。

 「(だ、ダメだ!数が多すぎる!よ、避けきれない!)」

 ズブ!グサ!ズブゥン!

 「グアァァァァァアーーー

 無数の光の刃がシンジを貫いた。

 バタァン!

 そのまま、シンジは倒れ伏した。

 床に紅い液体が四方に流れ出た…

 「アレェ?死んじゃったの?……しょうがないや、面倒くさいし後は消して帰ろうかな…。早くしなきゃソウルも怒るし…。」

 ―――5分後、アメリカ第一支部は白き光に包まれ、消滅した…

 

 

 「それで、アメリカ第一支部の消滅、原因は何だね?」

 冬月はそう切り出した。
   
 「原因は不明です。ただ、あれほど大規模な爆発は、N2爆弾でも使わない限り起きないでしょう。しかし、第一支部では

  その時にそのような実験を行っていたという報告もありませんし、どこかから打ち込まれた形跡もありません。」

 リツコは、落ち着いた様子でそう告げたが、赤く腫れた目とその下のクマが不眠不休で作業を行った事を表していた。

 「つまり、何らかの謎のエネルギーが沸き起こったということかね?」

 「はい、おそらくは。あれほどのエネルギーをN2爆以外で出すとなると、戦略核による可能性もありますが、

  支部跡地では放射能は検出されませんでした。」

 「では、質問を変えよう。第一支部内での事故かね?それともどこかの組織の仕業かね?」

 それは大きな問題である。現在、どこかの組織が狙うならば、エヴァンゲリオンを3体も所持し

 さらに、数々のオーバーテクノロジーを有しチルドレンを抱える、ここネルフ本部が狙われるべきなのである。

 つまり、アメリカ第一支部を狙うメリットはシンジしかないと言っても過言ではないのである。

 もし、支部内での事故ではなくシンジを狙ったものだとしたら、シンジが生存しているという事実が

 何らかの組織に知られている事になる。それは諜報の甘さを示しており、このままシンジが帰ってきた時に

 色々と困った事がおきるのだ。

 ―――もちろん、『シンジが生きている』という大前提の元であるが。

 この後も、原因の究明、事故かそうでないかの調査は続けられるが、何一つ解決することはなかった。

 また、シンジが見つかる事もなかった。

 ―――2年後、2018年、再来する運命の刻までは……

 

 

 ――――2018年――――

 「ハアー。」

 墓地からの帰り道、つまり通学路でアスカは大きくため息を吐いた。

 その最もたる原因は、全く帰ってこないシンジであるが、もう1つ彼女にはため息を吐きたくなるような事があった。

 ―――手紙である。

 白い手紙。もっともアスカが差出人を見た瞬間に、クシャクシャに握りつぶしたため酷く皺になってしまっている。
   
 彼女が激怒したその差出人とは、他でもない彼女の母親である。

 ―――もっとも、『義理』の2文字がつくが

 直ぐに握りつぶしたものの、彼女とていくら血がつながっていないとはいえ、母が気にならない訳ではない。

 だからこそ、あまり気乗りがしないものの、中身を見たのだ。

 しかし、その中身こそが彼女にとっては、憂鬱となることが記されていたのである。

 その中身であるが、何の事はない。ただ、夫と別れて日本に行くので、一緒に住もうと言うのである。

 『不安』である。どんな顔をすればいいか全くわからない。

 シンジの墓に行ったのはそのためである。

 彼女は辛いことも、悲しいことも、嬉しいことも、不安なことも、必ずと言ってよい程シンジに報告していた。

 しかし、行方不明のシンジである。しょうがないので何も入ってはいない墓に来ることにしていた。

 どう考えてもはたから見れば、シンジが愛しくて愛しくて堪らないように見えるのだが

 リツコやマヤが追求しても、一向に首を縦に振らないのである。

 ここまで来ると、意地っ張りも立派なものである。

 母は明日には来るらしい。アスカは憂鬱を風に揺られながら感じていた。

 

 

 ――――2016年――――

 シンジは朦朧としながらも意識を回復させていた。

 体は…動かない。血は…流れ続ける。視界は真っ赤に染まっていた。

 死。それを予感させるには、充分過ぎるほど最悪な環境が出来上がっていた。
  
 首をもたげてきた、目をつぶれば楽に死ねるという考えを、振り払うと助かる方法を思案した。

 ―――だが時は待ってはくれなかった。

 凄絶な白い光が降り注いだ。

 あまりの熱量に一気に意識が飛んでいった。

 シンジは遠のいていく意識の中、金色が光り煌く様をみた気がした。

 

 

 ――――2018年――――

 今、ネルフは驚きに包まれていた。

 何故なら、あの男が現れたのである

 「問題ない。」

 現れるなり、そう言ってのけたのはシンジの父であり、ネルフ総司令である碇ゲンドウである。

 いきなり帰ってきて、今まで何処にいた?と冬月が尋ねた答えがこれである。

 はっきり言って、冬月もリツコも含めてゲンドウは本当に死んだと思っていた。
    
 2年たった今でも、生存を皆が信じて疑わないシンジとは大違いである。

 しかも、全く答えになっていない言動は2年前のままである。

 冬月は『また、苦労が増える』と悪態をつきながらも心の底では喜びを感じていた。

 一方、リツコは複雑な面持ちである。

 「………赤木君、『Sonic Speed Winder』を調べろ。……至急な…。」

 「(『Sonic Speed Winder』――音速の…風使い?どういうこと?)……わかりました。」
 
 ゲンドウの唐突な命令に、リツコが疑問を感じつつ了解する。

 ―――What is 『Sonic Speed Winder』?

 

 

 ネルフにゲンドウが帰還した頃、アスカはうんざりするような退屈極まりのない、授業を受けていた。

 ――『受けている』というよりも『聞き流している』の方がより正確ではあるが。

 さらに追い討ちをかけるように、ポカポカの陽気が気持ちよくて、今にも眠ってしまいそうである。

 何となく高校に入ってしまったが、今さらながら後悔の念を抱いていた。

 「(………ん?)」

 ボーっと窓の外を眺めていると学校の前を1人の男が通り過ぎた。

 ここからでもハッキリ見とれる白い肌、白銀の髪、そして……

 「(紅い瞳?!まるでレイみたいな…。)」
    
 次の瞬間、バチ!っと目が合ってしまった。彼は微笑んだ、そっくりだった。

 ―――シンジの笑顔に。

 気付いたときには、アスカはちゃっちゃと荷物をまとめて、学校を後にしていた。

 アスカは、レイと同じ瞳を持ちシンジと同じ笑顔を形作る男を、追って走った。

 何故だか、無性に気になった。

 彼女が彼に追いついたとき、その場所は他でもないネルフだった…。

 「(こいつ、何者?)」

 怪しい。彼女はそう思った。

 男の後を追い、アスカは慣れ親しんだネルフに脚を踏み入れていった。

 

 

 『Sonic Speed Winder』

 〇 本名 ― 不詳  〇 年齢 ― 不詳  〇 性別 ― 不詳

 〇 活動時期 ― 2017〜  〇 活動地域 ― 世界全土

 〇 活動組織 ― Sound'z  〇 活動内容 ― 暗殺、破壊、諜報

 〇 他特記事項 ― 欧米における最大の勢力であるSound'zに所属。

           想像を絶する速さと謎の風を武器にここ1年で
             
          7千件以上の事件に関わる。また、拐を好んで

          使用することから、アジア系であると予想される。

 ※ Sound'z ⇒ Reverse side organization data ver.2018 P25〜P30

 

 『Sound'z』
       

 〇 構成人数 ― 不明  〇 本拠地 ― アメリカ北部

 〇 活動時期 ― 不明  〇 活動地域 ― 世界全土

 〇 活動内容 ― 暗殺、破壊、諜報、防衛、派遣

 〇 所属人員 ― 『Golden Erasure』『灼炎の指揮者』『Sonic Speed Winder』

         の3人が確認されている。

 〇 他特記事項 ― 欧米における最大勢力。構成人数は不明であり

          確認されている3人のみという可能性も在りうる。

          確認されている3人の実力は世界でもトップクラスである。

 ※1 Golden Erasure ⇒ Reverse side person data ver.2018 P21〜P22

 ※2 灼炎の指揮者 ⇒ Reverse side person data ver.2018 P23〜P24

 ※3 Sonic Speed Winder ⇒ Reverse side person data ver.2018 P25〜P26

 

 「……なるほど。活動時期、組織の本拠地、さらに想像を絶する速さ。これはキナ臭いわね……」

 リツコがデータベースからの情報にそう感想を述べる。

 「もっと詳しく調べる必要があるわ…ン?!ま、まさか!」

 さっそく更なる作業に入ろうとしたリツコだったが、監視モニターによりもたらされた情報が、作業の手をとめさせた。

 ―――というより、モニターに視線が行ってしまい、作業はやめざるおえなかった。

 モニターに写るは、白銀の髪、紅き瞳、真白な肌………

 ――フィフスチルドレン―――渚 カヲル

 リツコは急な事態に戸惑いながらも、直ぐに保安部に拘束するよう伝え、直ぐに自分も部屋を後にしてカヲルの元へ向かった。

 一方、それに驚いたのはカヲルをつけていたアスカである。

 自分とさして変わらない年の1人の男を、何十人もの保安部の猛者達が囲み取り押さえたのだ。

 ―――もっとも、カヲルは何の抵抗もせずに大人しくつかまったが

 彼女も怪しいとは思っていたが、こんなに大人数で取り押さえにくるとは、思っていなかったのだ。

 「で?一体、何の用かしら?……フィフスチルドレン、渚 カヲル君?」

 いつもよりさらに冷たさを増した口調で、怒りをあらわにし、リツコはカヲルに言った。

 「フフ、用ですか?まあ、しいて言うならシンジ君に会いに来たまでですよ…。」

 微笑みを浮かべてそう言った。が、そのセリフはリツコに更なる怒りをもたらした。

 「ふざけないで!!アナタのおかげで、どれだけ、どれだけシンジ君が傷ついたと思っているの!!!

  ……しかも会いにきたですって?フン!彼ならココには居ないわ!!!」

 怒声。喉の奥から搾り出されるような怒りの声。

 「……わかって…ますよ。シンジ君を傷つけたことは……だからこそ…だからこそ…会って…

  そして、話しがしたいんです。嫌ってくれてもいい、殺してくれてもいい……ただ、話しがしたい…

  シンジ君が…僕のことを…少しでも…友と思っていてくれるのなら…。少しでも…

  僕と話してくれるのならば………。」

 ―――なみだ

 

 

 暗闇の中、先ほどまで何も映してはいなかったモニターの前に男が1人…。

 「ホォー。こいつは……。オイ!」

 「……なんです?眠いんですよ……。睡眠を妨げないで下さい……。」

 「フン。若いんだからそれ位なんでも無いだろ。」

 「……無茶、言わないで下さい…。あんな処に1人で侵入させておいて……。あんなに起きてたのは生まれて初めてですよ。」

 「ケッ。たった170時間じゃねーか。だらしがない。」

 「…………」

 「ったく。解ったから、とりあえずコレを見ろ。お前が探しているヤツじゃないのか。」

 「…どちらですか?」
     
 「両方だ。『K』も『M』もな。しかも2人とも日本に居るぞ。『M』が沖縄、『K』が北海道だ。で?どっちに行く?」

 「今、何処ですか?」

 「今か?フム。東シナ海だな…。ということは?」

 「沖縄に…」

 「解った。飛ばすぞ!」

 グオォォォォウン!!!

 

 

 「暑い…。ホントに…暑い!」

 病室から響く声。

 「クーラー欲しいわ…。だいたい今時クーラーが無いなんて!」

 「悪かったわね。ボロい病院で。」

 その声にビクとして見ると。若い看護婦が立っていた。

 「アッ!人間は本来あるべき姿が1番だと思います!」

 「まったく。調子いいわね。」

 「へへへ。ゴメンナサイ。」

 ぺロっと舌をだして謝ったその女は、茶色の髪、少しタレた瞳を持っていた……

 ―――その女の名は……

 

 

 戻り来たりし…寡黙なる…男…

 再び現れし…真白なる…男…

 そして…

 姿を見せし…女と…男…

 始まる…

 全てが…

 そう…

 全てが…

 今…ここから…

 

 

……………To be continued.