愛しき者達
 
異伝
 
願い叶える者
 
《プロローグ》
 
 
 
シンジが目覚めると其処は紅き海が広がる地ではなかった
 
「?何?どうしてこんな所に居るの!?」
 
そこは不思議な空間であった、其処には何も無かった床も空も大地もあるのは光のみ、そ
 
のような不思議な空間であった、シンジはどうしてそのような場所に居るか解らず、混乱
 
し、辺りを見回す
 
「落ち着いてください」
 
その時、何処からともなく女性の声が聞こえた、その声は暖かく包み込むような声だった
 
「だ、誰ですか?」
 
シンジはその声を掛けた人が何処にいるのか解らずさっきよりせわしくなくキョロキョロ
 
と辺りを見回す
 
するといきなり眼の前に光に包まれた30歳ほどの女性が現れた
 
その女性は光輝くローブを身につけ蒼緑の2メートル程の杖を持っていた髪は金色に輝い
 
ているが黄金ではなく麦の穂の様な色であった
 
「いきなりこのような場所に招いてしまって申し訳ありません」
 
出てきて早々に深々と頭を下げる
 
「い、いえ、別に気にしてませんから、頭を上げてください」
 
その態度に驚き慌てて頭を上げさせる
 
「どうしてこの様な場所に連れてきたのですか?」
 
しかし、このままでは頭を上げてくれないとどうしてこの場に連れてこられたのかを聞き
 
会話をする事によって頭を上げさせた
 
「実はこの世界に困った事が起こりまして・・・」
 
シンジの問いに答え始める女性だが話し始めた事に「ボクがココに連れてこられた事に関
 
係あるのかな?」と思いながらも口を挟まずに聞く
 
「私はこの世界の創造主の一人で白の女神でアネルと言います、この世界にはもう一人の
 
創造主である黒の男神、グァラゼという者が居るのですが・・・・・」
 
そこでアネルの表情が暗く翳る
 
「その者が突然、この場を離れ、新しき自分の配下と居城を築き私に敵対してきたのです」
 
「はぁ」
 
その事と自分がこの場に居る事がどう関係するのかが解らず、気の抜けた反応を返す
 
それに気分を害した様子も無く話しを続ける
 
「そこで私は彼の配下と戦える様に、私の元に居る人々にもチカラを与えたのです、しか
 
し、それでは良くて硬直状態、かなりの確率で負けてしまう事が解っているのです・・・
 
しかし私は他の者にチカラを与える事には特化していても、戦う事や自分の為にチカラを
 
使う事には優れていないのです」
 
「そこで私はこの世界に安定をもたらしてくれる者を呼び寄せる事にしたのです」
 
其処まで聞いてやっと話しが理解出来た
 
「つまり、呼び寄せたのがボクだと?」
 
「いえ、ある意味そうなのですが・・・・」
 
何やら含みを含んだ言い方をするアネル
 
「実は貴方は『刻統べる門』と呼ばれる場所に漂っていたのです、それを私がこの世界に
 
導いたに過ぎません」
 
『刻統べる門』それはシンジの持つ知識の中にもあった単語であった
 
全ての時空・次元を紡ぐ場所、過去だろうと未来だろうと別の世界だろうとその門を通れ
 
ば行く事が出来る、制御出来れば・・・なのだが・・・・・
 
しかし、それにも制約が一つだけ付くのだ、自分の根本より分岐した世界にしか行く事が
 
出来ない・・・・・つまりシンジの場合は『地球』が歩む可能性のあった世界にしか行け
 
ないのだ
 
(そうか・・・つまりココはパラレルワールドみたいなモノか)
 
アネルの言葉により自分がどうしてこの場に居るのかを正確に知る事が出来た
 
しかし新たな疑問が浮かんでくる
 
(『刻統べる門』は自然発生するようなモノではない・・・誰がボクを『刻統べる門』に
 
入れさせたのだろう?)
 
色々と考えている所をアネルが話しかけてくる
 
「いきなりこのような世界に招いてしまって事は謝ります!!しかし、どうかチカラを貸
 
して頂けないでしょうか?」
 
「もし・・・グァラゼがこの世界を支配するような事になったらどうなるのです?」
 
アネルの願いを聞く前にどうしてもその点を聞いておきたかった
 
「その時は私が殺されるでしょう・・・そして白の女神である私が死ぬという事は、光を
 
失い、母の乳が出る事が無くなり新たな生命の成長が止まり、世界は闇に生きし者に統べ
 
られる事になるでしょう・・・・・」
 
「すみません、お聞きしたのですがそう言う状態になるのと闇の者も新たな生命を成長さ
 
せられないのでは?」
 
「それは違うのです、私は確かに創造主ですが我々を生み出した『主』と呼ばれる方がい
 
らっしゃいます、その方は初めにグァラゼを創り出し、グァラゼより私を産みだしたので
 
す・・・つまり、私よりグァラゼのチカラの方が強いのです・・・・・」
 
「なら、どうしてその『主』に助けを求めないのですか?」
 
「『主』は大変忙しきお方、私如きでは何処で何をしているかすら知る事が出来ないので
 
す、つまり御助力頂こうにもどうする事も出来ないのです・・・・・」
 
これまでの会話により、自分がこの世界を救わないとどうやら大変な事になる事が解った
 
その時、シンジの頭によぎったのは紅き海が広がる世界であった
 
「解りました・・・ボクで良ければチカラをお貸しします」
 
あの様な世界を生み出したくは無いという想いがシンジをこの地に留まらせる事となった
 
「ありがとうございます!!」
 
アネルはシンジの言葉を聞き、涙を流しながら頭を下げた
 
「では、貴方にせめてもの感謝に、私のチカラの欠片を差し上げます」
 
涙ながらにそう言われ、アネルは杖の先を5センチばかり折り、シンジにと手渡す、する
 
とその蒼緑の欠片がシンジの手に溶けていった、と、次の瞬間シンジは自分の中に新たな
 
チカラと知識が増えている事に気が付いた
 
「これが・・・この世界のチカラ・・・・・なるほど、『魔法』みたいなモノか・・・」
 
「『魔法』ですか・・・人はそのチカラをそれぞれ名前を付けて呼んでいます、人にはチ
 
カラを全て与えるにはキャパシティが足りませんので、普通は1つ、多くても2つしか持
 
っていませんが・・・」
 
「そうなんですか・・・やはりボクはもう人間では無いんだな・・・・
 
その言葉により初めて他人より人では無いと言われある程度理解していたが改めて悲しく
 
なるシンジ
 
「・・・・・・・・・」
 
そのシンジの様子にどう声を掛けて良いのか解らず黙っている事しか出来ない自分を悔や
 
むアネル
 
「あ、別に気にしないでください、チカラを手に入れた代償とでも思えば良いのですから」
 
そう言って弱々しくも微笑むシンジ
 
「そうですか・・・で、どうしましょうか?」
 
その言葉を聞き、もう気にはせずに話題を変え少しでもさっきの調子に戻って貰おうと思
 
うアネル
 
「何をですか?」
 
アネルが何を聞いてきているのかが解らなかった
 
「私としては直ぐにでも、下に行って頂きたいのですが・・・やはり与えたチカラに慣れ
 
て頂く時間も必要でしょうし・・・・・」
 
「ああ、そう言う事ですか・・・大丈夫です1日後には下に行かせて頂きますよ」
 
「え?しかし・・・チカラに慣れないままで良いのですか?」
 
「それなら何とか出来ますから大丈夫ですよ」
 
「そうですか、あ、後一つ言っておかなければならない事があります」
 
「なんでしょう?」
 
「実は・・・相手の配下のチカラ、人数、居城の場所等、全てが解っていないのです」
 
「全てですか・・・」
 
「はい、全部お任せするようで申し訳ないのですが・・・お任せしてもよろしいでしょう
 
か?」
 
「解りました・・・」
 
「これは長い事掛かりそうだな・・・」と思いながらも引き受けた以上ちゃんと解決しな
 
ければ・・・と改めて意気込みを入れるシンジであった
 
「それでは、お疲れと思いますので私はこれで失礼させて頂きます」
 
そう言いながらアネルは霞の様に消えて言った
 
「・・・この空間で休めって事か・・・」
 
何も無い空間に一人になり、アネルの意志を理解するシンジ
 
「はぁ、とりあえずこの新たに手に入れたチカラに慣れるとするか・・・」
 
そう言いながら黒き穴に沈んで行くシンジ・・・シンジは『ディラックの海』の中で時間
 
を止め新たなチカラに慣れていった、そして自分で合格と思える程使えるようになると元
 
の何も無い空間に戻り、疲れより眠り込んだ・・・シンジが何も無い空間から居なくなっ
 
たのはたったの30分だったが、『ディラックの海』の中で過ごした時間は1年程であっ
 
た・・・
 
 
 
 
 
プロローグ 完
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
後書き
 
初めての方は初めまして、私の作品を読んだ事のある方は、申し訳ありません新たに連載始めてしまいました。この作品はタイトルを見ると解ると思いますが「カズやんのいろいろ寄せ集めたぺぇじ(現・本日ハ晴天ナリ)」で私が連載させて頂いてます『愛しき者達』の異伝でございます、正確にはプロローグ後で別の世界に行ったら・・・という話ですね、まだまだヘボヘボなSSしか書けませんが読んで頂けると嬉しいです
 
PS.私が書く作品なので、『私らしい』作品に成ります意味が解る方はこの言葉で全て理解出来るでしょう
 
闇乃棄 黒夜
 

<HIDEの語り>

シンジ君はまず人を疑う事を覚えるべきだと思うわけです。
いきなり出てきたおばさんを信用するなんて…。

まぁ、シンジ君が熟女好きということで解決でしょうか?


というかグァラゼとか舌噛みそうな名前ですよね?<最悪



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闇乃棄 黒夜氏にメール