笑え笑え!世界を笑え!自分を笑え!
ある時、天に向かってそびえ立つビル群を見据え、世界を平坦にしたいと思い立ったならどうすべきか。選択はいくつかある。
1つ、テロリストになって全部ぶっ壊す。2つ、お偉いさんになって全部ぶっ壊す。3つ、核兵器の勉強でもして全部ぶっ壊す。
4つ、自らを人外へと昇華させ自身で全部ぶっ壊す。
結局は壊すのだ。変えるとはそういうことだ。何かを変えるには破壊があり、その後に再生や再建がある。
そして、1度壊したものは2度と帰っては来ない。世界の絶対的法則。全ての生物と全ての無生物と、およそ全ての事象に言える
宇宙開闢以来くつがえる筈のない永久不変の真理。ベニクラゲ、プラナリア――それら不老不死に限りなく近しい生物たちは、確かに
存在している。だが、分裂や若返りは不老不死といえるのか。彼らの矮小な脳内には死や誕生などといった概念など、はたして
存在するのだろうか。それは彼らの成長なのだ。蛇が脱皮をするように、人が質量を増やしていくように――分裂し、若返ることが
彼らの成長なのだ。命を脱ぎ捨てるという矛盾した成長は、人とは違う概念で生きていく故に肯定される真実。
真なる不老不死とは、そう、完全なる1個体。成長せず、変化せず、保ち、閉じている。完成された1。ゼロでもツーでもなくワン。
常にそこにあり、老いず若返らず増えず減らず、そこに在ったその瞬間より1。
故に人が人であり続ける以上は不老不死にはならない。人が世界に存在し始めるには、人が必要だ。分裂と増加と吸収のみが、
人を人とする。そこに在ったその瞬間より常に∞。成長し、変化し、開け放たれ、老い、増やして減っていく。
ならば、簡単だ。人でなければいい。だが、意志を宿す必要がある。それも、人と同レベルの思考と知識と能力をだ。
そうでなければ、意味はない。1でありつつも、∞を目指す。完全に閉じた生物は、世界に対して自動的で受動的だ。意志を宿してこそ
世界に対して動きを持つことが出来る。
生み出されるべきは、人にして人ではない人。
黒髪の女は笑う。
忌避すべき絶対生命の誕生と、その禁忌に身を焼かれてしまえばいい、と。
黒髪の女は笑う。
超常の源と異常の血が生み出す、その絶対生命とそれを愛しげに見つめる自分に。
それはきっと、怨嗟と諦観の泣き笑い。
黒髪の女の眼前で、フラスコ型のカプセルが鈍い音を響かせ、世界に禁忌という名の汚濁を吐き出していた。
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雨が降り続いていた。灰燼と化したビル群の大小の破片が雨を弾く。カヲルはその銀髪に降りかかる水を気にもせず、水溜りと
瓦礫を踏みしめる。うっとうしいとは思うが、気持ちいいとも思う。本質的にナルシストなのだ。
「言いえて妙だね、水も滴るいい男」
誰からも返って来ないツッコミにカヲルは頭を捻る。頭の固い連中だ。
そんな思考を感じたのか、カヲルの周りを取り囲むフードの男達がその手の杖の先端を突きつけた。早く歩けとの要求。
「はいはい」
肩を竦め、歩みを速める。眉の上まで切った前髪を横に流しながら空を仰ぎ見ると、鉛色の雲が一面に広がっていた。
ほどよい雷が落とせそうだと微笑し、周りを見渡す。周囲には5人。更に遠巻きに10人。目視できない遠巻きの10人は別として、
近接する5人は全員が全員とも目深にフードをかぶっている。黒いレインコートに身を固め、不恰好なガスマスクをしたその風貌は
どうにも怪しすぎる。
はて、と疑問符を浮かべつつ首を傾ぐ。
自分は客人の筈で、手厚く迎えられるべきである。つまり、今のこの状況は色々と間違っているのでは、と。
「間違っているのならば、正す必要がある」
呟き、紡ぐ。雨はカヲルにとって最大の味方だ。今なら雨によって広がる水を通して、自身の《limit》――平面円形状に50メートル、
自らを頂点とした高さ1500メートル円形部直径50メートルの円錐形領域――以上の範囲に力を到達させられる。
遠巻きの10人を含めて、15人全員に届く。
「雷」
《word》の発動と同時に700ミリボルトの電気信号を作成、生体電流へと鋳造、幾つかの行程を経て脳への誤認を促す感覚飛ばしを
敢行した。目への衝撃、という情報を込めた生体電流を全方位に向けて射出する。ピンポイントでぶつけるのは不可能ではないが、
15人以外誰もいないのだ、問題なかろう。
15人が15人とも急に認識した目への衝撃に目を1度閉じる。本能に根ざした当然の行動。閉じた目蓋の奥で、作られた感覚のその不自然
を知覚しすぐさま瞳を外気に晒す。が、既に遅い。カヲルの姿は溶けるように消えていた。
「ちゃっちゃか追え」
先頭を歩いていた男の言葉に従って、他の4人が散り散りになる。ガスマスクを外し、フードをばさりと後ろに流すと
掘りの浅い平坦な顔が現れる。男は空を見上げ、その重い雲を呪った。
みしみしと積みあがった瓦礫が音を立てる。奇跡的なバランスをもって存在していたそれが、カヲルの放った電流の僅かな伝導で
軋んだ。一箇所が欠ければ雪崩のようにそれは男の頭上へと降り注ぎ、その質量と重力の助けを借りた圧力で男を潰さんとする。
だが、
「うざ」
頭上に注いだ全ての瓦礫は、その手の杖で砕け散った。最早、粉と成り果てた瓦礫が風と雨にさらわれ行く。その流麗な粉の波紋を
ひとしきり眺め、男は他の4人を追うように加速し始めた。一陣の風が雨を穿つ。
「なるほど、それでまずはシャワーか」
「はい、かなり濡れましたので」
カヲルはタオルでわしゃわしゃと髪の水分を吸い取りながら答える。短めに切った髪は水分が飛ぶのも早くて、少し物足りない。
ゲンドウにもらったチェーンは腕に巻きつけている。その冷たさがシャワーで火照った体に気持ちいい。
その正面で腕を組みながら目を細めているのは、一見軽薄そうな長髪の男だ。この男、名をシゲル=アオバと言う。
「それで、カヲル君。聞いているとは思うが、1度確認しよう」
「どうぞ、シゲルさん」
青葉と呼ぶなという要求が通ったのが嬉しいらしく、1度ニッと笑う。すぐに顔を引き締めると二の句を継いだ。
「本部にこの情報を伝えたときは確定じゃなかったんだがな、君がこちらに来てカッパの変態どもと遊んでいる間に確定情報に
なった。伊吹マヤが来ている、そして限りなく危険な物を作っている。職員を1匹とっ捕まえてゲロしたが、それ以上は
分からん。だが、伊吹マヤがいるのは確実だ。つまり、」
「つまり、その施設はルネサンスのものだ、と」
再生の徒――。
ネルフに仇なすコウゾウ=フユツキを主とする組織にして、サクノのS2機関を奪い去り、そして何よりもカヲルの自信喪失の
源であるビャク=ロンが所属する場。
マヤ=イブキ――。
想像を絶するその叡智が生み出した小型パリアフィールドはカヲルを敗北に追い込んだ。サクノのS2機関を取り去った張本人
でもある。
因縁だな、と思う。
「そこでだ。我々ネルフ西域支部としては君に何とかして欲しい」
「言われなくとも」
既にカヲルは滾っていた。ふつふつと燻るものがあり、今にも着火して暴走しそうだ。
「あのレインコートの変態どもに会ったな? あれもルネサンスだ」
「分かっていますよ」
「ここにつくなり、レインコートで作業していた職員を軽く感電させたのはどこの誰だい?」
互いに苦笑する。
「まぁ、肩こりがほぐれたとか言ってたからいいんだがな」
は、と笑う。
「はは」
「ははは」
思う。こうして笑っていられることがどれほど大事なことかを。
Episode 11 : smile on the thin ice
蠢くおびただしい数のコードが隠されることもなく床を覆っていた。そのコードが1基の円柱に集う。円柱の下にはコンソールを
操る黒髪の女、マヤ。全長5メートル以上あるその円柱も、毎秒100ヨタキューブフロップスの演算処理能力を有すルネサンスの
メインコンピュータの端末の1つでしかない。
毎秒100ヨタキューブフロップス――1秒間に100の10の24乗回の更に3乗、100那由他回の浮動小数点演算を行う
その人類史上最速の処理能力こそが全ての鍵だった。生物の神経細胞構造を活用し、自己学習能力や不完全なデータの処理能力に長じる
バイオコンピュータを基底に史上最高速を持って、全てをシュミレートする。人、というものを。人の全てをシュミレートする。
あらゆる可能性、あらゆる記憶、あらゆる道程、あらゆる選択。右を選ぶか左を選ぶか。右を選んだ後、右を選ぶか左を選ぶか。
その後に右か左か。上か下か。選択は無数にして膨大。ほんの僅かな時間においてすら積み重なる選択と判断の連鎖は人を形作り、
鋳造する。
産声が上がる。
生まれながらに経験と記憶と知識と力と――完成された全てを持ち、それ自身のみで存在する1。
人造の人間の、その最高峰。意志を持ち、かつ閉じた絶対生物。
マヤは笑う。
その忌避すべき生物と、神に背く背徳に。
「神なんかいない……全ては人の罪」
鬼の形相でコンソールを操る。遺伝子を欺き、細胞を騙し、世界に嘘をつく。始まりは解析。解析して得た全てを、自らが持つ全てを
注ぎ作る。次いで混合。超常の遺伝子と異常の血で育て上げた異形のハーブ、そして馬糞を混合し発酵させる。そして数週間を経、
そこに在るものがマヤの目の前のこれだ。円柱の横に据えられた人間大のフラスコ型カプセル。そこで揺れる人造の絶対生物。
中世ヨーロッパルネサンスの錬金術師にして医師、異常の怪奇、テオフラトゥス=フィリップス=アウレオールス=
ボンバトゥス=フォン=ホーエンハイムは語る。
――『フラスコに人間の精液と数種類のハーブ、馬糞を入れて密閉し、馬糞が発酵する温度で保温する。
四十日経過するとフラスコの中に透明で人間の形をしたものが出現する。
しかしこれにはまだ実体が無いため、人の生き血を入れさらに四十週間馬の胎内の温度で培養する。
このとき毎日生き血を与えなければならない。こうして完成した生命体は人間の子供と同じ姿をしているがずっと小さい。
生命体は自然にあらゆる知識を身に付けている。しかしフラスコの外に出したり、生き血を与えるのを止めるとすぐに死んでしまう』
と。
その人造生命を曰く、ホムンクルス、と。
異常の怪奇ホーエンハイム――通称パラケルススのその技術を、異常の超天才マヤ=イブキとその手が作り上げた至上最速最高最強の
スーパーコンピュータが再現、そして更に越えた。
マヤの目の前でたゆたう、そのホムンクルスの体躯は成人。勿論、フラスコの外に出せないものをマヤが作る筈も無い。故に完璧。
故に完全。そして、死なず老いず生きず若返らない。閉じた完全存在。しかし、確かに意志を持つ。
「死なない兵――どれだけの覇王が望んだか分からない、最高の兵」
だが、死なないために王自らすら危機に瀕す。だからこそ、古来より権力者は自らを不老不死と化すべくした。
「抜かりはない」
コンソールを怒りを込めるように叩きつける。
注いだ『完成された全て』に、絶対忠誠を刷り込んでいる。完成されている事が逆に遺伝子に基づく理性と本能に逆らう事を許さない。
忠誠はまさしく絶対。
「私のために働きなさい!」
マヤの顔は狂気に染まっていた。狂喜が貼りついた泣き顔にも似た顔が、笑みを形作ってただただ全てを嘲笑う。
壊れてしまえばいい、と思った。何もかも。世界も倫理も自分も――。
+++++++++++++++++
やまない雨がコンクリを濡らす。真昼だというのに、空を厚く覆う雲が一筋たりとも光が差すことを許していないため、酷く暗い。
まるで夜。
暗がりの中、コンクリを踏みしめるカヲルの影が揺らいでいた。
前を見ると巨大な銀色の檻のような建物が見える。円柱が積み重なったような階段状の建造物を中心に、一際張り出した板状のパーツ
から細い柱が地上に突き立っていた。いかにも、を感じさせる適度な胡散臭さを持った建物にふんと鼻を鳴らした。イヤなことを
思い出す。雰囲気、空気、ともかく肌と五感から得る情報がぴりぴりと脳を焼く。似ていた。途方もなく似ている。
かつて見た害悪な建築と、そのイカレた建造者とを思い出す。あまりにも似すぎていて、死ぬほどクソッタレだ。
「どうにもこうにも、ルネサンスとは相性が悪そうだ」
建物から人から、その思考ルーチンから何から何まで。
施設の入り口に達し、1度足を止める。『1人で行くというムリを通すのなら、正面から入らないという譲歩はすべきだ』という
シゲルの言葉に従うのなら、ここを華麗に迂回してとっとと裏口からコソコソするべきだ。
だが、そうもいかない。話はそう簡単ではない。
「また5つ、か」
気配があった。しかも、明らかにこちらが気付くように、存在を強く主張している。隠れているのなら、存在を主張などということは
しない。故に明快な解が導かれる。
「足止め、というわけか。気配を殺さないのはよっぽど自信があるか、それ自体が罠か……。どちらにせよ――」
飛び込めば分かる。
身をかがめ、最も近い気配へと駆け寄った。雨がカヲルの体に弾かれて地に落ちていく。
暗がりの中、一際大きくカヲルの影が揺れた。カヲルの動きとは逆に、さざなみのように。
銀色の檻の入り口に立つ5時間ほど前、丁度カヲルが寝床に身を沈めようとしていた時だった。ノックの音と同時にドアが開き、
シゲルの顔がひょいと見えた。
「何か?」
「少しいいか?」
いやだ、とは言わない。その程度にはカヲルは人間が出来ている。
招きいれると、シゲルはカヲルの真正面の安っぽいソファーに座った。柔軟性の欠片もないえんじ色の布が軽く沈む。
対してカヲルも座りを正した。ガラクタじみたベッドのスプリングが申し訳程度に軋む。
僅かに考えあぐねて、シゲルが口を開く。
「君は明日、どうするつもりだ?」
「1人で。僕だけで。たった独りで挑むつもりです」
「そうか」
観念したようにシゲルは目を細める。揺るがない決意、というものは揺るがないからこその揺るがない決意なのだ。
真っ直ぐな視線、というものは真っ直ぐだからこその真っ直ぐな視線なのだ。その決意に、その視線に、
わずかばかりでも目を背けたのならば、その決意と視線に何かを言うことなど出来ようはずもない。
「ただ、1人で行くというムリを通すのなら、正面から入らないという譲歩はすべきだ」
「分かっているつもりですよ。僕もバカじゃない」
バカではない。だが、タクティクスとストラテジーについてどうかと言えば、決してバカではないとは言えない。表面的に
よっぽどロジカルに見えるカヲルよりも、こと戦術や戦略についてはシンジの方が冷静でクレバーだ。基本的に猪突猛進型で、
基本的に後先を考えず、基本的に素直で単純。
実に非複雑な事実。
それは、たった1つの言葉で現すことが可能なシンプルな事実。
幼いのだ。
渚カヲルはカヲル=ナギサは銀髪の少年は元最後の使徒タブリスは、たった1つの幼いという事実に起因して素直で単純。
人の汚さを理解するのも、残虐性を有すのも、殺しに際して情けを見せるのも、油断も、自信も、慢心も、自尊も、何もかも、
自らも含めた他人を見通したようで見通せていないのも、情を見せるのに皮肉に溢れているのも、
自らの感情を理解したようで完全に無欠に圧倒的に理解出来ていないことも――幼さは矛盾した全ての事象を内包する。
幼さというキーは全てを切り拓くマスターキーのごとく明快な解を解き解す。
足りていない。何もかもが足りていない。人間として足りていない。経験が経験が経験が経験が経験が経験が経験が経験が、経験が、完全に無欠に圧倒的に驚異的に全てにおいて何をおいても足りちゃいない。
「1つ、聞いてもいいかい?」
無言の肯定がカヲルから返り、1度頷くとシゲルは続ける。
「君はどうしたい?」
どうしたいのだろう。
本当に、どうしたいのだろう。
「分かりませんよ。人間ってのは難しいです」
人間初心者、という人間。何年もの年月を重ねて得るべき肉体と能力と非整合の精神。存在が矛盾している。
矛盾自体が肉体を形成したかのような矛盾。矛盾存在者という矛盾。
「俺はな、答えを知っている。君の答えを、だ。俺の《word》はそういうものでな。君の心が、頭が、底が見える」
めぐらせる。思考を知識を記憶を、カヲルはめぐらせる。
無数に存在する《word》のいくつかは確かに心を読み取る事が可能なものはある。そして、今この場でシゲルがカヲルに嘘をつく
理由はない。つまり、本当なのだろう。
「教えてもいいんだけどな……」
どうなのだろうか。年長者の助言でトビラを開けてもらう事は、壁を登るためのロープをたらしてもらう事は、許されるのだろうか。
下げていた視線を上げると、シゲルの微笑があった。諦めとも憐憫とも違った曖昧なその笑みは、きっと大人の笑顔。
子供が何を言っても全てを飲み込んで、なおかつどうにかしてやろうというオトナのオトコの笑顔だ。
カヲルは、拳を握るり口を強く結ぶ。
「いいえ、いりません。僕はきっと、きっと……やってみせます。1人で、自分で」
それは出来ない事はないのだと信じて疑わない子供の我侭ではなく、変わろうと必死になった子供の決意。
変わりたくてわめき散らす叫びなのだ。
静かな決意の叫びを、静かに燃える瞳を、熱く猛る心を、諌めることなどシゲルには出来なかった。
「そうか。そうだな。うん、そうだ」
頷くシゲルの顔は、今までで1番優しく1番哀しい。
「それでも、少しくらいの助言は許されるだろう。だから、1つ――過去を忘れることはできない。
過去は自らの手で断ち切るしかない。そして、『真に正しい決意をする』のではなく、『決意したことを正しいと信じるしかない』という
ことだ」
「正しいと信じる……」
「陳腐な言葉だが、自分を信じろって事だな。至言だ」
マントのように翻された黒いレインコートが、カヲルの電撃によって千切れ飛ぶ。
その瞬間――最も近い位置にいた相手に仕掛けた途端、他の4つの気配のうち3つの気配が瞬時に距離を詰めた。
寄ってこない1人が不気味だが、ともかくカヲルは前後左右に1人ずつ集った敵に対して意識を向ける。
距離を詰める速さといい、機敏な反応といい、陣形といい隙がない。
「なるほど、優秀だ」
だからこそ相応しい。完全の更に完全の上に完璧を上乗せし余すことなく1粒たりとも残さず欠片も残さずに圧倒的に納得するために、
何よりも断ち切るために、何とも適した相手だ。
「納得してやる。過去に今に、自分に!」
故に4人全員ぶっちめる。コソコソ隠れている1人も引きずり出して畳む。
「雷!」
《word》を紡ぎ、力を解放する。今こそ反逆の時。子供の鳴き声にも似た、過去を断ち切らんともがく力が暴れ狂う。
行こう。行こう。行け。
越える。越える。越えろ。
今こそ、自分を信じるために――自信とはすなわち「自らを信ず」ことなのだから。
一歩を踏み出す。目の前の敵を叩き伏せるべく、だ。
一際大きくカヲルの影が揺れる。カヲルの動きとは逆に、さざなみのように。
+++++++++++++++++
To Be Continued to Episode 12.
Next, the corpse is born.
So, Kworu will cry bitterly and cry bitterly.
+++++++++++++++++
<後を書く>
またしてもバトルほぼゼロ。そして再びMMR手法。
真面目に考証されるとあまりのトンデモ具合故つらいものがあるので、禁止。
そして、次回はカヲルサイドからネルフサイドに移る予定。予定にしか過ぎないが。
そろそろ格好いいアスカを書きたいデスよ?