―STORY―
ケトラートン社の重力素子機構で天に浮かぶ高層球体。
雨が窓を打つその一室で、今まさに1つの命が閉じた。
「妹を、殺した」
彼の手には血に染まったナイフ。物言わぬ肉親。血と肉。咎。罪。
愕然たる後悔と妹の思い出が彼を串刺しにした。
全てが白昼夢のようで、全てが現実のようで、全てが虚構のようで、全てが嘘のようで。
彼は血みどろの腕をかかげ、慟哭と哀しみで人相すら変わり果てた顔で願う。夢だったなら、と。
†††
次に目覚めると、そこは果て無き闇の世界だった。
白い鉄条に戒められし、自らの体。緋色の池にたゆたう、宵色の獣。
彼は宵の獣、レィルンに選択を迫られる。
即ち、
「罪を消すために死ぬか、今すぐ死ぬか」
彼は頷いた。前者こそが今の望みだった。
罪が消えるなら、例えこの身を焼かれようと構わなかった。
宵の獣は自分以外の全てを見下した瞳と声で囁く。
「罪を具現化せよ――」
彼の罪は形をなし、そして、罪を穿ち集積する。
己が罪を霧散すべく、他の罪を討つ。
ゲームが始まる。
神の遊戯のごとき、レィノンのためだけのゲームが。
ジェルは己が罪を世界から削除すべく、他の罪を砕き始める――。
†††
未来都市で、血の嵐が吹き荒れる。
さあ、絡み合い鬩ぎ合い睦み合い殺し合え。